1ハンドの結果には運があり、判断には改善できる部分がある

ポーカーでは、配られる手札や次に開くカードを選べません。その偶然は、1ハンドの結果を大きく変えます。一方で、参加するか、いくら払うか、相手の行動にどう対応するかは自分で選ぶ判断です。

運の影響を受ける部分学んで改善できる部分
最初に配られる手札その手札で、今の位置から参加するか
フロップ・ターン・リバーの札ボードが変わった後に相手の候補を見直すか
相手が実際に持っていた札行動から複数の候補を考え、費用と取り分を比較するか
1回の勝負の最終結果同じような条件で、理由のある選択を繰り返せるか

したがって「運があるから考えても無駄」「実力があれば毎回勝てる」のどちらも、判断と結果を混同しています。ここでは標準ホールデムを例に、その違いを整理します。

有利な勝負でも、短期には負ける

勝つ確率が高いことは、負ける可能性がなくなることではありません。自分が有利な手札で勝負しても、相手が必要な札を引く回はあります。

説明用に、毎回80%で勝ち、各回が独立している仮想の勝負を考えます。10回すべて勝つ確率は次の通りです。

0.8¹⁰ ≒ 10.74%
少なくとも1回負ける率 = 1 − 0.8¹⁰ ≒ 89.26%
10回の結果についての疑問答え
80%有利なら10連勝しやすい?全勝は約10.74%
1回でも負けたら、80%という仮定が間違い?負けが含まれる率は約89.26%なので、それだけではいえない
連敗した後は、次に勝つ確率が上がる?この独立モデルでは次も80%のまま

この80%は実際のプレイヤーの勝率ではありません。対戦の条件を固定した数学モデルです。実際の勝率には相手の手札やレンジ、ボード、人数が必要で、勝率とエクイティで扱います。

各回が独立し勝率80%で一定の仮想モデル。10回全勝の確率は0.8の10乗で約10.74%、少なくとも1回負ける確率は約89.26%。実際のプレイヤーの勝率を示すものではない。

試行数と、結果の揺れを分けて考える

試行数が増えると、偶然による割合の揺れは小さくなる傾向があります。ただし「何回やれば必ず実力通り」と境界を決められるわけではありません。

単純な勝敗割合のモデル

各回が独立し、勝率50%で変わらないモデルでは、勝つ割合の標準偏差は√(0.5×0.5÷回数)です。標準偏差は揺れの大きさを表す指標で、必ずその範囲に入る上限ではありません。

回数勝つ割合の標準偏差
100回5パーセントポイント
10,000回0.5パーセントポイント

回数が100倍になると、このモデルの割合の揺れは1/10です。「50%±5ポイント」は45〜55%という幅を示しますが、その範囲を外れることもあります。

実際のチップ損益は、単純な勝敗回数と違う

ポーカーでは毎回の勝ち負けの額が同じではありません。小さく何回も勝って、1回に大きく負けることもあります。相手、スタック、プレイの仕方、手数料なども変わります。

そのため、100ハンド中何回勝ったかだけで実力を測ることはできません。確率と得失点を結び付ける期待値や、同じ条件の判断の記録も必要です。条件が変わる実戦に、前節の二項モデルをそのまま当てはめないでください。

技能を示す研究は、どの条件を調べたのか

Potter van Loon、van den Assem、van Dolderによる2015年の原著研究「Beyond Chance?」は、オンラインポーカーの過去の成績と、その後の成績の関連を調べています。

研究の条件内容
対象形式オンラインのノーリミット・テキサスホールデムのリングゲーム
データ期間2009年10月〜2010年9月
対象1つの主要オンラインサイトの3レート
規模約7,690万の異なるハンド、約4億5,610万のプレイヤー・ハンド観測
結果の要点過去に高い成績の群が後の期間でも高い傾向など、技能要因を支持

プレイヤー・ハンド観測とは、1つのハンドを参加者それぞれの記録として数えたものです。4億5,610万ハンドが別々に行われたという意味ではありません。

これは技能が結果に関係する根拠の一つですが、現在のすべての形式、ライブの大会、完全な初心者まで同じ数値になると証明したものではありません。

「1,500ハンド」は、全員が勝つ保証ではない

この研究には、特定の比較シミュレーションで約1,500ハンド以上になると技能の影響が優勢になるという推定があります。ただし、誰でも1,500ハンドで利益が出る、以後は運で負けないという結論ではありません。

研究者も、推定方法やハンド結果の依存、対象者の選択効果などの限界を述べています。対象と方法を外し、「1,500回やれば実力が収束する」とだけ引用しないことが大切です。

運何割・実力何割を、一律には決められない

1ハンドの勝敗を知りたいのか、一定期間の点数を比べたいのかで、問いが違います。相手同士の技能差、形式、試行数、比較する指標によっても答えは変わります。

同程度の判断をする人同士では結果の差に偶然が目立ちやすく、判断の差が大きい組合せなら技能の影響を見つけやすくなります。それでも、その技能差から今回の勝敗を確定できるわけではありません。

また、技能が関わることと、国内で金銭を賭けてよいかは別の問題です。研究結果を法的な可否や収益保証へ読み替えないでください。

上達は、勝敗以外の判断と記録で確かめる

「今日は勝ったか」だけでなく、次のような、自分で確認できる項目を残します。

学習する技能確認できる記録
ルールと金額行動順、レイズ総額、追加コール額を説明できたか
参加ハンド位置・先行レイズ・スタックに合う範囲を確認したか
相手の候補特定の1組へ決めつけず、複数候補と理由を書けたか
ベット目的弱い何からコールを受けたいか、強い何を降ろすかを説明できたか
確率と損益必要勝率の分母や、今から払う額を間違えていないか
感情への対応取り返すために予定外の参加や延長をしなかったか

同じ種類の局面を復習して、以前の誤りが減ったかを比べます。PokerStars公式の基礎コースも、手札選択、位置、ベット目的などを独立した学習項目にしています。

向き不向きを決めつけず、次の課題を1つ選ぶ

短期の連敗だけで「才能がない」と決める必要はありません。一方、勝ちが続いたことだけで、自分の選択がすべて正しかったともいえません。

金額を間違えるなら計算、相手を1組に決めつけるならレンジ、感情で参加を変えるなら休止の条件と、課題を分けます。具体的な学習順は勝ち方・上達の基本、感情と終了条件はティルトの解説で確認できます。

金銭を賭けない練習でも、判断の記録と検算はできます。勝利を約束する回数や方法を探すより、条件を揃えた1つの判断を説明し直すところから進めます。