期待値は、結果の確率と損益を掛けて足した平均

ポーカーの期待値は、EV(Expected Value)とも呼びます。ある行動で起こりうる結果を、それぞれの確率と損益で重み付けした平均です。

EV = 結果1の確率 × その損益
   + 結果2の確率 × その損益
   + ……

たとえば、30%で+12点、70%で−4点となる選択なら、0.30×12−0.70×4=+0.8点です。負ける回の方が多くても、勝つときの増加額が大きいため期待値はプラスです。

+0.8点とは、その回に0.8点がもらえるという意味ではありません。実際の結果は+12点か−4点で、期待値はその分布の平均です。定義と結果分岐からの計算法はGTO Wizardの公式解説にも示されています。

以下は、金銭を賭けない学習用のチップ計算です。損益を数える基準時点を揃えることが、最初のポイントになります。

コールの期待値は、今から増える損益で計算する

相手がベットした後、コール直前のポットが150点、今から払うコール額が50点とします。2人だけ、引き分けなし、以後の追加ベットなし、費用なしの条件です。

コールすると総ポットは200点になります。

結果受け取る額今から払う額判断時点からの純損益
コールして勝つ200点50点+150点
コールして負ける0点50点−50点
今フォールドする0点0点0点

勝ったときの純増は200点ではありません。自分が追加した50点を戻し引きするため、150点です。

勝率30%なら+10点、20%なら−10点

勝つ確率の仮定コールのEVフォールドとの差
30%0.30×150−0.70×50=+10点コールが10点高い
20%0.20×150−0.80×50=−10点フォールドが10点高い

同じポットとコール額でも、相手の手札・レンジに対する確率が変われば結果は変わります。数字を計算できても、入力する確率の仮定が誤っていれば判断も変わります。

コール直前のポット150点に追加50点を払う例。30%で純増150点、70%で追加損失50点となるため、EVは0.30×150−0.70×50=プラス10点。2人、引き分け・以後の追加ベット・費用なし。

過去に入れたチップは、もう一度費用にしない

この150点の中に、過去に自分が入れた30点が含まれていても、現在のコールの費用へ再び30点を足しません。既に入れたチップは、今フォールドしても戻らないからです。

今の選択は「追加50点を出すか、出さないか」です。ハンド開始時からの総収支を記録することと、今ここからの選択を比較することを分けます。

必要勝率は、コール額÷コール後の総額

コール直前のポットをP、追加コール額をC、勝つ確率をpと置きます。前節と同じ単純条件なら、次の式です。

EV(call) = pP − (1−p)C
         = p(P+C) − C

EVが0になる確率 = C / (P+C)

P=150点、C=50点なら50/(150+50)=25%。勝率25%でコールとフォールドの追加期待損益が同じです。

Pには相手のベットが既に入っているため、さらに同じベットを足しません。相手ベット前のポットを使う式とは、記号の意味が違います。比と百分率の読み替えはポットオッズの解説で確認できます。

ブラフでは「相手が降りる」を結果へ入れる

ショーダウンの勝率だけでは、ベットのEVを説明できません。相手がフォールドすれば、弱い手でもその場でポットを獲得できるためです。

現在100点のポットへ50点をベットし、相手が降りれば勝ち、コールされたら必ず負ける純粋ブラフを考えます。相手のレイズはないと仮定します。

結果仮定した確率判断時点からの損益EVへの寄与
相手が降りる40%+100点+40点
相手がコールし、自分が負ける60%−50点−30点
合計100%—+10点

相手が降りたとき、自分の50点ベットは戻るので、純増は元のポット100点です。損益分岐のフォールド率は、50/(100+50)≒33.33%になります。

ただし、実戦で相手が40%降りると分かっているわけではありません。コールされても勝つことがある、相手がレイズする、ターン以降も打つなどの場合は、分岐とその損益を追加します。ブラフの条件はブラフの解説へ進めます。

プラスEVでも、別の行動と比較する

ベットのEVがプラスでも、それだけで最善とは決まりません。同じ基準時点でチェックの方が高ければ、ベットによって期待値を失うことになります。

仮定した行動同じ基準で計算したEV
チェック+30点
ベット+20点

この仮定なら、チェックの方が10点高い比較です。ベットの+20点をゼロとだけ比べないようにします。

反対に、コールかフォールドを比べるときは、追加損益としてのフォールド0が基準になります。ソルバーの数字を見る場合も、EVの単位と基準点を確認してください。GTO Wizard公式ヘルプでは、行動ごとのEV比較と、エクイティ等の別指標を区別しています。

引き分けや後続ベットがあると、単純な式の前提が変わる

引き分けは、取り分を入れて計算する

2人でポットを等分する通常の引き分けなら、エクイティq=勝ち確率+引き分け確率の半分です。追加ベットなし・費用なしなら、コールEVをq×コール後の総額−コール額と表せます。

3人以上の分割やサイドポットでは、そのポットで得る割合を別に扱います。詳しくは勝率とエクイティで条件を整理できます。

将来も支払うなら、今の完成率だけでは足りない

フロップからリバーまでのドロー完成率を使っていても、フロップのコール後にターンでさらに払う可能性があります。逆に、役が完成すれば相手から追加点を得る場合もあります。

考え方追加で見積もること注意点
インプライドオッズ完成したとき、後のベットで相手から得る額相手が必ず払うとは限らない
リバースインプライドオッズ完成しても上位役に負け、さらに失う額低いフラッシュや弱いキッカー等も確認する

どちらも将来行動の仮定です。都合のよい追加利益だけを足し、未完成時の損失や完成時の負けを除いてはいけません。エクイティ実現率の公式解説も、ベットが残るほど単純な取り分と実際のEVの関係が変わると説明しています。

チップEVと賞金EVは、いつでも比例しない

チップEVは点数の増減、賞金EVは大会の順位・賞金配分等を含む期待値です。大会では、脱落や順位の価値があるため、チップが2倍になれば賞金の期待も必ず2倍とはいえません。

同じ勝率とコール額でも、賞金配分、残り人数、他者のスタックが必要になる場面があります。この記事の点数計算を、賞金EVの最適な答えとして使わないでください。

条件を揃えて練習する

コール直前ポット120点、追加額40点、勝率30%、引き分け・追加ベット・費用なしなら、どうなるでしょうか。

EV = 0.30×120 − 0.70×40 = +8点
必要勝率 = 40/(120+40) = 25%

答えが合っていても、ポット120点へ相手ベットを二重に足したり、勝った時の利益を160点としたりすると、別の数字になります。復習では、ポットの時点・追加額・結果の分岐・単位を先に書き、最後に勝敗の結果と分けて記録します。