HRCは、入力した条件に対する結果を読む学習ツール

HRCを使うときは、スタック・評価モデル・許容する行動をそろえ、その条件に対するレンジとEVを読むことが基本です。対戦と関連クライアントを終了した後の学習に使います。

入力条件をそろえてサンプリングし、その条件に対するレンジとEVを読む流れ

HoldemResources Calculator(HRC)は、オーストリア・ウィーンのHoldemResources GmbHが提供するポーカーのソルバーです。ソルバーは、設定したゲームの中で各プレイヤーの戦略を計算するソフトウェアを指します。HRCはノーリミット・テキサスホールデム(NLHE)のプリフロップとポストフロップを扱い、ClassicとProでは計算できる範囲が異なります。提供元の製品案内・会社情報

結果に出るレンジは手札候補の集合で、候補ごとの重みや行動の割合も関わります。EV(期待値)は、起こり得る結果をその確率で重み付けして評価した値です。実際の相手の手札や、その一度の結果を言い当てる数字ではありません。

2026年10月26日に確認した公式ニュースでは、2026年2月4日公開のStable Version 4.1が案内されています。本記事はその時点の公式文書と掲載画像を読む教材です。実機で新規ハンドを入力して再計算した検証ではなく、後述する公式画像の制作時の版も確認できていません。公式ニュース・4.1の更新内容

計算前にスタック・賞金・行動の条件を決める

入力は「自分の手札」だけでは足りません。まず局面と評価方法を決め、次にどの行動を選べるゲームにするかを設定します。冒頭の図の「条件をそろえる」に、この二つの作業が含まれます。

そろえる条件意味と確認する点
各プレイヤーのスタック持っているチップ量。自分の残りだけでなく、関係する他のプレイヤーの量もそろえる
ブラインド・アンティ強制的に出すチップ。bbはビッグブラインド1回分を基準にした単位。アンティの方式や有無も局面に合わせる
評価モデルチップ量を評価するのか、賞金配分を使った価値を評価するのかを決める
賞金配分・残りフィールドICM系では、残っているプレイヤー全体と該当する賞金構造が必要。現在の卓だけの情報で大会全体を置き換えない
許容する行動とサイズレイズの候補、リンプやフラットコールを許す場面・人数など。フラットコールはレイズせずにコールすること
ポストフロップの扱い以降のベット、人数、抽象化の設定。どこまで簡略化したゲームを計算するかを決める

公式の手順では、Monte Carlo Handを作成してスタック・ブラインド・評価モデルを設定した後、Next → Betting Setupへ進みます。Betting Setupで行動やサイズを決め、Previewでできあがるゲームツリーを確認します。
ゲームツリーとは、各局面から選べる行動を枝分かれで表したものです。Previewは設定変更に追従する確認表示で、そこで直接ツリーを編集する仕組みではありません。公式のツリー設定ガイド

サイズ欄も単位によって意味が変わります。文書の例では、2.5bbは合計2.5bbへのレイズ、3.0xは直前のレイズ額の3倍、all-inまたはaiは有効スタックまでのオールインです。有効スタックは、そのプレイヤー間で実際に取り合える範囲のスタックを指します。ここでの記法はツリーの候補を指定するもので、実戦で選ぶ額の提案ではありません。

特に確認したいのは、コールを許したつもりの局面でコールが存在するか、参加人数の上限で後ろのプレイヤーが強制的にフォールドさせられていないかです。公式文書では、Max active playersの制限は他のツリー設定より先に適用されると説明されています。行動候補を変えると、単に計算が速くなるだけでなく、解くゲーム自体が変わります。

本記事では、現行ソフトの賞金入力欄の位置や初期画面の全操作までは確認していません。未確認のボタン配置を補わず、入力すべき条件と公式に確認できる工程を説明しています。

チップEVとICMでは評価するものが違う

チップEVはチップ量、ICMはスタックと賞金配分から求めるモデル上の賞金価値を評価します。同じチップの増減でも、どの評価モデルを使ったかによって意味が変わります。

チップEVはチップ量の期待値、ICMは残り全体のスタックと賞金配分によるモデル上の賞金価値を評価する

比較する点チップEVICMを使う評価
主に評価するものチップ量の期待値賞金配分を反映したモデル上の価値
賞金配分賞金への換算を行わない順位ごとの賞金構造が必要
スタック情報計算する局面のチップ条件大会の残り全体のスタック条件が価値に関係する
数値を読むときの注意そのまま現金利益と扱わない確定した賞金や収益保証と扱わない

ICMはIndependent Chip Modelの略です。残りスタックから順位の分布をモデル化し、賞金配分に対応させて価値を求めます。HRC提供元の無料ICM計算機は、古典的なMalmuth–Harville方式を使うと明記しています。大人数向けのMTT ICMについては、同じ方式への近似を使う別の説明があります。公式ICM計算機の説明・MTT ICMの技術説明

ICM系の結果は、入力した賞金構造と残りフィールドに対するモデルの評価です。現在の卓のチップ量だけを入れ、賞金構造を適当に置いた結果を大会の評価とみなすことはできません。また、2020年のMTT ICM記事にある処理人数や精度の数値を、現行4.1の実測性能として読み替えることも避けます。

モデルの違いを比較するなら、スタック・ブラインド・アンティ・行動ツリー・抽象化・サンプリング条件をできる限りそろえ、変更した評価モデルと賞金条件を記録します。複数の設定を一緒に変えると、結果の差が何によるものか分からなくなるためです。
本記事では、同じハンドをチップEVとICMで計算した対の数値は取得していません。以下の公式表示例も、賞金モデルが不明なのでICMの数値例には使いません。

公式例で設定・計算・表示の関係を読む

HRCでは、設定欄の数字、できあがったツリーの数字、表示を絞り込んだ数字が、それぞれ異なる役割を持ちます。公式文書にある二つの例を追うと、設定の変更と表示の切替を区別する理由が分かります。

サイズ設定は、ツリーで使う候補を決める

公式のツリー設定ガイドには、Geo Sizeを66%、対象の分岐のSPRを10とする例があります。SPRは、有効な残りスタックを、その時点のポット量で割った比率です。ポットは、そのハンドで取り合っているチップの集まりを指します。

公式のGeo66%・SPR10の例では88%・57%・42%の候補から66%に最も近い57%を選ぶ

Geoは、一定のポット比率でベットを重ね、端数のスタックを残しにくくするための幾何学的サイズ設定です。公式例では、次の候補のうち指定した66%に最も近い57%が選ばれます。

公式例の回数各回のポット比率
3回88%
4回57% ← 66%に最も近い候補
5回42%

したがって、Geo欄が66%なのにツリーに57%が出ても、それだけで入力ミスとはいえません。Geo欄は、すべての局面で同じ66%を使う指示ではないためです。「4回」は文書例のベット回数であり、4回のストリートがあるという意味でもありません。これは公式のツリー構築の説明で、現在のソフトによる独自の再計算や、賭け額の推奨ではありません。公式のGeo Size例

平均表示と、特定のボードを指定した表示を分ける

次は、公式のPostflop Calculationsページにある保存済み計算のGIFです。プリフロップはSBが2bbへレイズし、BBがコール。フロップは次の3枚で、BBチェック → SBが1bbベット → BBが2bbへレイズ → SBコールという経路です。ターン時点の表示はポット8bb、両者の残り21bbになっています。

公式GIFの同じ計算で、AcQd7hのTURN平均表示はBBチェックのRange42.8%、8c指定は48.2%。再計算を伴わない表示比較

GIFで同じBBのチェック行を見ると、平均表示のTURN (avg.)ではRange 42.8%、ターンを8♣に指定した8c TURNではRange 48.2%です。左は複数のターンを平均した表示、右は次の4枚に条件を絞った表示です。

操作は、ターンのノードを選び、Strategy Tableの下にあるボード選択で対象のrunoutを指定する流れです。runoutは、この先に出るボードの組み合わせを指します。公式文書は、この切替について同じ計算の表示フィルタで、再計算は不要と説明しています。
42.8%と48.2%は、元GIFの「Range」欄を読んだ値で、現実のBBがその割合でチェックするという観測ではありません。公式のボード表示説明とGIF

このGIFの賞金構造・評価モデル・制作時のビルドと日付は不明です。そのため、ICMの結果、現行4.1で再現した結果、チップEVとICMの比較とは呼びません。ここで確認できるのは、平均と特定ボードが別の表示条件であることです。

Proで特定の局面を詳しく計算する場合、公式手順は、標準のMonte Carloプリフロップ計算で対象の分岐を選び、Hand: Create Postflop Calculationからボードと以降の行動を設定する流れです。作成した専用計算は評価モデルと入口のレンジを引き継ぎますが、その後は独立します。元のプリフロップレンジを後から変えても、専用計算へ自動反映されません。専用ポストフロップ計算の公式手順

計算結果は抽象化とサンプリングにも依存する

手札やボードを細かく表示できても、内部でどこまで区別して計算したかは別の問題です。さらに、反復計算が十分進んだかも確認します。計算の安定性と、入力したゲームの妥当性を分けて読むことが必要です。

サンプリング後のCIは最近のプリフロップ戦略の変化を見る目安で、許容行動・抽象化・まれな分岐も別に確認する

新規Monte Carlo Handでは、最初に短いサンプリングが走り、レンジとEVが初期化されます。公式文書は、多くのハンドでその初回分だけでは不十分と説明しています。続けて緑色のRun Nash Calculationからサンプリングを実行します。文書掲載のダイアログでは、Full Tree、Until CI value is reached、CI Target 10.0が示されています。これは掲載例の設定であり、すべての局面の精度を保証する基準ではありません。公式サンプリング手順

CI(Convergence Indicator)は、最近のサンプリングでプリフロップ戦略がどの程度変化したかを見る目安です。小さいほど変化が少ないことを示しますが、誤差が何%以下という保証でも、利益の保証でもありません。公式の説明でも、主なレンジが落ち着いた段階で、まれな分岐はまだ十分収束していない場合があります。収束とは、反復を進めたときの戦略の変化が小さくなっていくことです。

確認する層見落とすと起きること
許容行動コールを除外するなど、意図と違うゲームの解を読んでしまう
抽象化実際には違う手札や経路を、計算内で同じグループとして扱っていることに気づけない
サンプリング初期値や、まだ変動の大きい分岐を確定的に読んでしまう
表示条件平均と特定ボードなど、異なる対象の数字を比較してしまう

抽象化は、ゲームを計算できる大きさに簡略化することです。たとえば公式文書のBalanced[HQ]では、T♠5♣3♦のフロップで、K♦Q♠・K♠Q♥・K♦Q♣を同じものとして扱う例があります。これは一部のバックドアフラッシュに関わるスート情報を省くためです。バックドアフラッシュは、ターンとリバーの両方が必要なスートになって完成するフラッシュを指します。現実の完全なゲームでも手札が同一という主張ではありません。公式の抽象化の説明

プリフロップ計算内のポストフロップ表示は、詳細な専用ポストフロップ計算より強く簡略化されています。さらに、LQのImperfect Recallを使うストリートは精度を大きく妥協し、そのストリートのEVも表示されません。画面の細かさを、内部計算の細かさと同一視しないようにします。

ツリー設定のPostflop: Offは、フロップ以降をベットせずチェックで進める前提です。コールやリンプの後の展開が重要な局面でこれを使うと、意図と違うレンジになり得ます。CIを下げても、この前提の違いは解消しません。公式の設定上の注意

一部の分岐だけを追加計算するSubtree Samplingは、それ以前の行動を固定し、選んだ範囲から先を更新します。先行するレンジやEVまでは更新しません。また、ノードロックで戦略を変更した直後も、他のEVが自動的に整合するわけではありません。公式手順は、変更に合わせてReset Regretを選んだ再計算を案内しています。表示フィルタの切替と、こうした計算条件の変更は区別します。公式の部分計算・ノードロック説明

ClassicとProの料金・端末・利用条件

Classicは短めのスタックを主に扱うプリフロップ向け、Proは深いスタックや専用ポストフロップ計算まで扱う構成です。Classicの「30bbまで」は公式の適性の目安で、プラン説明上の推奨範囲です。30bbを一律の入力上限として読み替えません。

公式料金ページの機能ClassicPro
スタックの目安30bbまでに適する任意の深さに対応する設計
ツリーのノード数最大50,000と掲載RAMに依存し、プラン上は無制限
ポストフロップのバケット256固定最大16,384
専用ポストフロップ計算対象外対応
作成後の行動追加・スクリプトによるツリー構築対象外対応
ユーザー・インストール数1ユーザー・2インストール1ユーザー・2インストール

ノードはツリー内の局面、バケットは抽象化でまとめた手札等のグループです。数が大きければ、すべての設定で自動的に必要十分な精度になるという意味ではありません。公式プラン機能

以下は2026年10月26日に確認した公式掲示額(USD)です。月額換算の表示と、実際の請求周期を分けています。

契約の形ClassicPro
月ごとの自動更新毎月$16.66毎月$49.99
3か月ごとの自動更新3か月で$39.99(月額表示$13.33)3か月で$119.97(月額表示$39.99)
12か月ごとの自動更新12か月で$119.90(月額表示$9.99)12か月で$359.90(月額表示$29.99)
非更新の1年キー$119.90、アクティベート後365日$359.90、アクティベート後365日

自動更新プランは解約しない限り更新され、非更新キーは期間終了で失効する形です。税を含む購入画面の最終額や日本円換算は確認していません。公式料金・更新条件

公式ページ間に残る差にも注意が必要です。現在の料金ページはClassicを50,000ノードとする一方、ツリー設定マニュアルには25,000ノードとする記述が残っています。本記事は前者を現在の掲示仕様として紹介し、インストール済み製品で上限を試したとは扱いません。料金ページ・マニュアルの制限記述

ダウンロードページはWindows、macOS 64-bit、Linux 64-bitのX86/ARMを掲載しています。スマートフォンやタブレット向けの専用アプリとしては案内していません。使用するOSやハードウェアでの動作は、現行の配布条件と照合する必要があります。公式ダウンロード情報

無料試用として案内されているのは14日間のClassicで、支払情報は不要です。Classicの試用をPro機能の無料試用と混同しないようにします。本記事の制作ではソフトの導入、試用キー取得、試用を行っていません。なお、古い入門文書にはメモリの初期値4GBという説明がありますが、公式ニュースにはRAMの65%へ変更した記録もあるため、4GBを現行の固定初期値とは断定しません。試用の対象・更新履歴

対戦とクライアントを終了した後の学習に使う

HRCの利用ライセンスと、対戦するサービスのツール規約は別々の条件です。製品を正規に利用できることだけで、対戦中の使用が認められるわけではありません。

HRCのEULAは、提供ランチャーからの利用、ライセンス範囲の遵守、UIやメモリからの自動スクレイピングの禁止などを定めています。一方、PokerStarsの公式規約は、ICM・Nash・GTOなどの高度な計算ツールを、同社のクライアント・アプリ・ソフトウェアが開いている間は使用できないものとして説明しています。卓を開いていない場合や別端末でも適用すると明記されています。これはPokerStarsの具体例であり、他サービスも同じ文面だという意味ではありません。HRCのEULA・PokerStarsの第三者ツール規約

4.1の更新情報にはGGクライアントを検出するとHRCを終了する機能も記載されていますが、これが全サービス・全条件への適合を保証するわけではありません。利用先ごとの最新規約を確認し、対戦を終えて関連クライアントも終了してから学ぶという運用にします。4.1の公式更新情報

復習時には、局面の条件、評価モデル、ツリー、抽象化、サンプリング、表示ボードを記録しておくと、数字が違った理由を後から追えます。HRCの結果は、記録した条件の中で何が起きているかを理解する材料として読みます。